マウスピース矯正

マウスピース矯正とは

マウスピース矯正とは、透明なカスタムメイドのマウスピース型矯正装置を使用し、歯列を少しずつ移動させる矯正治療です。ワイヤー矯正と異なり、取り外し可能で目立ちにくいため、審美性を重視する成人や社会人に特に人気があります。

本ページでは、マウスピース矯正の中でも世界的に最も広く普及しているインビザライン(Invisalign)について詳しく解説します。特に、インビザラインの圧下効果と顎無し(リトルフェイス)改善の可能性、アタッチメントの役割、アウトカムシミュレーション、iTeroによる精密診断、クリンチェックによる治療計画について詳しく取り上げます。

インビザラインとは

インビザラインは、3Dスキャン技術とAIを活用したデジタル矯正システムです。従来のワイヤー矯正と異なり、患者ごとにカスタムメイドされた薄く透明なアライナー(マウスピース)を装着し、1~2週間ごとに新しいアライナーに交換しながら歯を徐々に移動させます。

インビザラインは、以下のような特徴を持っています。

  • 透明で目立ちにくい
  • 取り外し可能なため、食事や歯磨きがしやすい
  • 金属アレルギーのリスクがない
  • ワイヤー矯正に比べて痛みが少ない
  • デジタル技術による精密な治療計画が可能

マウスピース矯正と圧下効果(顎無し改善の可能性)

インビザラインは、従来のワイヤー矯正に比べて歯の圧下(intrusion)が得意な矯正方法です。

圧下とは?

圧下とは、歯を垂直方向に歯槽骨内へ押し込むように移動させることを指します。特に、上顎前歯の圧下が可能になることで、以下のような効果が期待できます。

  • ガミースマイル(歯茎の露出が多い状態)の改善
  • 噛み合わせの安定化
  • 顎無し(リトルフェイス)の改善

顎無し(リトルフェイス)の改善

顎無しとは、骨格的に顎が小さく見える状態を指し、日本人に多い傾向があります。特に、過蓋咬合(ディープバイト)の患者では、前歯が深く噛み込みすぎているため、下顎が後退しやすく、相対的に顎が小さく見えます。

インビザラインの圧下効果を活用することで、前歯を適切な位置に移動させ、下顎の位置を改善することが可能になります。その結果、Eライン(鼻先と顎先を結ぶライン)のバランスが改善し、フェイスラインが整う可能性があります。

アタッチメントの役割

インビザラインでは、歯の移動をより正確に行うために「アタッチメント」と呼ばれる小さな突起を歯に装着することがあります。

アタッチメントとは?

  • コンポジットレジン(歯科用樹脂)で作られた小さな突起
  • アライナーが歯にしっかりフィットするための補助装置
  • 特定の歯の動きをコントロールし、より効果的に歯を動かす

アタッチメントの種類と役割

  • 回転移動用アタッチメント(ねじれのある歯の修正)
  • 圧下用アタッチメント(歯を歯槽骨内に沈める動きの補助)
  • 遠心移動用アタッチメント(奥歯を後方に移動させる)
  • 舌側傾斜用アタッチメント(歯の傾斜角度を調整する)

アウトカムシミュレーションとは?

インビザラインでは、治療開始前に最終的な歯並びをシミュレーションできる「アウトカムシミュレーション」を行います。

アウトカムシミュレーションの特徴

  • 治療後の歯並びを3D画像で可視化
  • 歯の動きを段階的に確認可能
  • 治療期間の予測が立てやすい
  • 患者が治療のゴールを事前に把握できる

iTeroによる精密診断

インビザラインの精度を高めるためには、従来の歯型採取ではなく、口腔内スキャナー「iTero(アイテロ)」を使用することが一般的です。

iTeroとは?

  • 光学スキャンによる非接触型の口腔内スキャナー
  • 従来のシリコン印象よりも高精度かつ短時間で歯型を取得可能
  • アウトカムシミュレーションと連携し、治療計画を即座に立案可能

iTeroを用いることで、誤差の少ない精密な矯正計画を立てることができ、治療の成功率が向上します。

クリンチェック(ClinCheck)による治療計画

インビザラインでは、クリンチェック(ClinCheck)と呼ばれる3Dシミュレーションソフトを使用し、歯の動きの詳細な治療計画を作成します。

クリンチェックの特徴

  • 歯の移動を1ステップごとに詳細にシミュレーション
  • 最適なアタッチメントの位置を決定
  • 患者ごとにカスタムメイドの治療計画を作成
  • 治療の進行状況をリアルタイムで確認可能

クリンチェックにより、患者の希望に応じた治療計画が可能となり、より正確な矯正治療を実現します。

まとめ

インビザラインを中心としたマウスピース矯正は、透明で目立ちにくく、取り外し可能という利便性に加え、圧下効果によるガミースマイルや顎無し(リトルフェイス)の改善が期待できる治療法です。

また、アタッチメントを活用することで、より複雑な歯の移動が可能となり、iTeroやクリンチェックを用いた精密な治療計画により、より高い成功率を実現できます。

インビザラインは、従来のワイヤー矯正とは異なるアプローチで歯を動かすため、患者ごとに適切な治療計画を立てることが重要です。矯正治療を検討されている方は、専門の矯正歯科医と十分に相談し、自分に適した治療法を選択することをおすすめします。