治療に必要な期間
歯列矯正の治療期間は、患者の不正咬合の種類、歯の移動量、使用する矯正装置、年齢、骨の代謝速度、患者の協力度など、さまざまな要因によって決まります。一般的には1年半から3年程度が目安とされていますが、症例によってはそれ以上の期間を要することもあります。
本ページでは、矯正治療に必要な期間の目安、治療段階ごとの所要時間、期間に影響を与える要因、治療期間を短縮する方法について詳しく解説します。
矯正治療の期間の目安
矯正治療の期間は、治療法や症例によって異なりますが、以下のような目安があります。
1. 部分矯正(MTM:Minor Tooth Movement)
- 治療期間:3ヶ月~1年
- 適応症例:前歯の軽度な叢生(ガタガタの歯並び)、すきっ歯、軽度の咬合異常
- 特徴:前歯のみなど限定的な矯正治療で、短期間で終了するが適応範囲が限られる
2. 全体矯正(ワイヤー矯正・マウスピース矯正)
- 治療期間:1年半~3年
- 適応症例:中等度以上の叢生、上顎前突(出っ歯)、下顎前突(受け口)、開咬、過蓋咬合、交叉咬合
- 特徴:歯全体の咬合を整えるため、部分矯正より時間がかかる
矯正治療の段階と所要時間
矯正治療は大きく以下の4つの段階に分けられ、それぞれの期間が治療全体の期間に影響を与えます。
1. 診査・診断(1~2ヶ月)
- 精密検査(レントゲン・CT撮影、セファロ分析、歯型採取など)
- 診断結果の説明と治療計画の立案
- 患者の同意を得て、治療開始
2. 歯の移動(矯正装置の装着期間:1年半~3年)
- ワイヤー矯正やマウスピース矯正を用いて歯を計画的に移動
- 治療の進行に応じて、1~2ヶ月ごとに調整(通院)
- 矯正力に適応しながら、歯槽骨のリモデリング(骨吸収と骨形成)が行われる
3. 咬合調整(3~6ヶ月)
- 咬合の微調整を行い、理想的な咬み合わせを形成
- 顎関節への負担を軽減し、後戻りのリスクを抑える
4. 保定期間(1年半~3年)
- 矯正装置を除去後、後戻りを防ぐためにリテーナーを装着
- 保定装置は、最初の半年~1年は1日中装着し、その後は就寝時のみ装着
矯正治療期間に影響を与える要因
治療期間は個々の症例によって異なりますが、以下の要因が大きく影響します。
1. 不正咬合の種類と重症度
- 軽度な叢生やすきっ歯であれば、治療期間は短縮可能
- 重度な下顎前突や骨格性の異常を伴う場合は、治療期間が長くなる
2. 年齢(成長期 vs 成人)
- 成長期(小児矯正):顎の成長を利用できるため、矯正の効率が良い
- 成人矯正:骨の代謝が遅いため、歯の移動に時間がかかる
3. 使用する矯正装置の種類
- ワイヤー矯正(表側・裏側)は、比較的早く動く
- マウスピース矯正は、適切な装着時間を守らないと治療期間が長くなる
4. 患者の協力度
- マウスピース矯正の場合、1日20時間以上の装着が必要
- ゴムかけ(顎間ゴム)の指示を守らないと治療が進まない
5. 骨密度と歯の動きやすさ
- 骨密度が高い場合、歯が移動しにくく治療期間が長くなる
- 逆に、骨が柔らかいと歯が動きやすい
治療期間を短縮する方法
矯正治療をスムーズに進め、期間を短縮するための方法もあります。
1. アンカースクリュー(TAD)
- 骨に固定源を設置することで、歯を効率よく移動させる
- 難症例の治療期間を短縮可能
2. 低周波振動装置の利用
- オルソパルスやアクセルデントなどの低周波振動装置を使用し、骨のリモデリングを促進
3. 患者の協力度を高める
- 定期的な通院を怠らない
- 矯正装置の装着時間を厳守する
まとめ
矯正治療の期間は、部分矯正であれば数ヶ月、全体矯正では1年半~3年程度が目安となります。
治療期間は、使用する矯正装置、骨格や歯の状態、患者の協力度などによって大きく変動します。治療をスムーズに進めるためには、歯科医師の指示を守り、適切なメンテナンスを行うことが重要です。
矯正治療を検討されている方は、まずは専門の矯正歯科医に相談し、自分の症例に適した治療計画を立てることをおすすめします。