矯正治療の流れ

矯正治療は、診断から保定までの各ステップを正確に進めることで、機能的かつ審美的な歯並びを実現する治療プロセスです。治療を成功させるためには、事前の精密検査と適切な治療計画の立案が不可欠であり、矯正装置の選択、定期的な調整、保定管理まで一貫した管理が求められます。

本ページでは、矯正治療の一般的な流れを「初診相談」「精密検査」「診断・治療計画」「矯正装置の装着」「動的治療期間」「保定期間」の6つのステップに分け、詳細に解説します。

矯正治療の6つのステップ

1. 初診相談(無料カウンセリング)

矯正治療を検討されている方は、まず矯正歯科専門医によるカウンセリングを受けることが重要です。初診相談では、患者の主訴や治療の希望をヒアリングし、治療の必要性や適応可能な矯正方法について説明を行います。

初診相談で行うこと
  • 現在の歯並び・噛み合わせの確認
  • 咬合の不調和や顎のズレの有無を評価
  • 治療方法の概略説明(マウスピース矯正・ワイヤー矯正の違いなど)
  • おおよその治療期間・費用の概算提示

2. 精密検査

初診相談の後、矯正治療を希望される場合には精密検査を実施します。精密検査では、顎の成長状態や歯の移動に影響を与える因子を詳細に分析し、科学的根拠に基づいた治療計画を立案します。

精密検査の内容
  • セファログラム(頭部X線規格写真)撮影
    • 顎骨の前後的・垂直的な位置関係を評価
    • 顎顔面の成長方向を予測
  • パノラマX線撮影
    • 親知らずや埋伏歯の有無を確認
    • 歯根の長さ・形態を評価
  • 口腔内スキャナー(iTeroなど)
    • 歯列の3Dスキャンを行い、精密な治療計画を立案
  • 咬合診査・顎機能検査
    • 顎関節の動きや咬合力を評価
  • 写真撮影(口腔内・顔貌)
    • 治療前後の変化を視覚的に記録

3. 診断・治療計画の立案

精密検査の結果をもとに、矯正歯科医が詳細な診断を行い、治療計画を立案します。この段階で、治療方法や使用する装置の選択、治療期間の見通しを説明し、患者との合意を得た上で治療を進めます。

診断時の説明内容
  • 不正咬合の種類と原因(骨格性or歯性、軽度or重度など)
  • 治療方法の選択肢(マウスピース矯正・ワイヤー矯正・アンカースクリュー併用など)
  • 抜歯の必要性(非抜歯矯正が可能か、抜歯矯正が必要か)
  • 治療期間と予測される歯の動き
  • 費用の詳細(自由診療・医療費控除の説明)

4. 矯正装置の装着

診断結果をもとに治療方針が決定したら、矯正装置を装着します。装置の種類によって、治療の進め方が異なります。

装置別の装着方法
  • マウスピース矯正(インビザラインなど)
    • 初回アライナーを受け取り、装着指導を実施
    • 1日20時間以上の装着が必要
  • ワイヤー矯正(マルチブラケット装置)
    • セラミックまたはメタルブラケットを歯面に接着
    • 矯正用ワイヤーを装着し、初期の調整を実施
  • アンカースクリューの埋入(必要な場合)
    • 固定源として顎骨にスクリューを埋入
    • 強い歯の移動が必要なケースで使用

5. 動的治療期間(歯の移動)

矯正装置を装着後、計画通りに歯を動かしていく段階に入ります。治療期間中は、4〜6週間ごとに通院し、装置の調整を行いながら歯の移動を確認します。

動的治療期間中の管理
  • ワイヤー矯正の場合:ワイヤーの交換・調整
  • マウスピース矯正の場合:新しいアライナーへの交換(1〜2週間ごと)
  • ゴム掛け(顎間ゴム)の使用指導
  • 口腔衛生管理の指導(矯正中の虫歯・歯周病予防)

6. 保定期間(後戻り防止)

歯が計画通りに移動し、最終的な咬合関係が確立されたら、矯正装置を取り外し、リテーナー(保定装置)を装着します。リテーナーの使用を怠ると、歯は元の位置に戻ろうとする(後戻り)ため、保定期間は非常に重要です。

保定装置の種類
  • 固定式リテーナー(歯の裏側にワイヤーを固定)
  • 可撤式リテーナー(クリアタイプ、プレートタイプ)
    • 就寝時のみ装着するタイプもあり、症例に応じて選択
保定期間の目安
  • 1〜2年間の装着が推奨
  • 装着期間を徐々に減らしながら経過観察

矯正治療の期間と費用の目安

矯正方法 治療期間 費用目安
マウスピース矯正 12〜24ヶ月 80〜130万円
表側ワイヤー矯正 18〜30ヶ月 70〜100万円
裏側矯正 24〜36ヶ月 120〜150万円
部分矯正 6〜12ヶ月 20〜50万円

まとめ

矯正治療は、正確な診断と計画に基づいて進めることで、長期的に安定した咬合を確立できる治療法です。

初診相談から保定までの各ステップを理解し、適切な管理を行うことが治療成功の鍵となります。矯正を検討されている方は、まずは専門の矯正歯科医に相談し、ご自身に最適な治療方法を選択してください。