医療費控除

矯正治療は自由診療に分類されるため、治療費は全額自己負担となります。しかし、日本の税制度では一定の条件を満たせば「医療費控除」を受けることが可能です。医療費控除を活用することで、矯正治療にかかった費用の一部を所得税から還付してもらうことができます。

本ページでは、医療費控除の概要、対象となる条件、計算方法、申請手順、注意点について詳しく解説します。

医療費控除とは?

医療費控除の概要

医療費控除とは、年間に支払った医療費の一部を所得税の控除対象とし、納税者の負担を軽減する制度です。家族の医療費も合算して申請できるため、家計全体の負担軽減につながります。

対象となる医療費の範囲

医療費控除の対象となるのは、病気や怪我の治療にかかった費用であり、以下のようなものが該当します。

  • 歯科治療(矯正治療を含む)
  • 入院・手術費用
  • 診察料・検査料・処方箋による薬代
  • 通院にかかる交通費(公共交通機関に限る)

※ただし、美容目的の治療や、一般的な健康増進のための支出は対象外です。

矯正治療は医療費控除の対象となるのか?

子どもの矯正治療(小児矯正)

子どもの矯正治療は、基本的に医療費控除の対象となります。これは、顎の成長発育を正常に導くための治療と認められているためです。

対象となる治療例

  • 一期治療(顎の成長誘導)
  • 二期治療(永久歯の排列を整える矯正)
  • インビザライン・ファースト
  • マイオブレース(口腔筋機能療法)

成人の矯正治療(成人矯正)

成人矯正も医療費控除の対象となる場合がありますが、治療目的が「機能回復(咬合改善)」であることが条件です。

対象となる治療例

  • 出っ歯・受け口の咬合異常を改善する矯正
  • 発音障害・顎関節症の改善を目的とした矯正

対象外となる矯正治療

以下のような場合は、医療費控除の対象外となる可能性があります。

  • 単なる審美目的の矯正(見た目を良くするためだけの治療)
  • 歯を白くするホワイトニング
  • ラミネートベニアやセラミック矯正(歯並びを削って整える治療)

医療費控除の計算方法

控除額の計算式

医療費控除額は、以下の計算式で算出されます。

(1年間に支払った医療費の合計 − 保険金などの補填額 − 10万円)= 控除額
※ただし、控除上限額は200万円

具体例(矯正治療の医療費控除)

項目 金額(円)
矯正治療費 1,000,000
通院交通費 10,000
医療保険による補填額 0
控除対象額 (1,010,000 – 100,000) = 910,000

この場合、910,000円が医療費控除の対象となり、所得税の還付を受けることが可能です。

医療費控除の申請方法

医療費控除を受けるには、確定申告が必要です。以下の手順で申請を行います。

1. 必要書類を準備する

  • 確定申告書(AまたはB)
  • 医療費控除の明細書(領収書の記録)
  • 源泉徴収票(給与所得者の場合)
  • 通院に関する交通費の記録(バス・電車の領収書は不要だが記録が必要)

2. 確定申告の提出方法

  • 税務署への直接提出(紙の申告書を郵送または持参)
  • e-Taxによるオンライン申請(マイナンバーカードが必要)

申請期間は、翌年の2月16日〜3月15日まで(例:2024年の医療費は、2025年2月16日〜3月15日に申請)。

医療費控除を受ける際の注意点

1. 領収書は必ず保管する

医療費控除の申請には、医療機関発行の領収書が必要です。確定申告時には提出を求められませんが、5年間の保管義務があります。

2. 交通費の記録を忘れずに

通院にかかった公共交通機関の交通費(電車・バス)は控除対象です。領収書が発行されないため、日時・経路・金額を記録しておくことが重要です。

3. デンタルローンを利用した場合の扱い

矯正治療費をデンタルローンで支払った場合、「実際に支払った年」の医療費として控除対象となります。ローンの利息部分は控除対象外です。

4. 家族の医療費も合算できる

本人だけでなく、生計を同一にする家族(配偶者・子ども・親など)の医療費を合算して申請可能です。合計額が10万円を超えた場合、控除を受けられます。

まとめ

矯正治療は自由診療ですが、医療費控除を活用することで、実質的な負担を軽減することができます。特に、子どもの矯正治療はほぼ確実に控除対象となるため、適用条件を理解し、確定申告を適切に行いましょう。

年間10万円以上の医療費があれば、医療費控除の申請が可能
矯正治療は「機能的改善」が目的であれば控除対象
交通費も控除対象になるため、記録を忘れずに
確定申告時には領収書・明細書を準備し、正確に申請

医療費控除の制度を賢く利用し、矯正治療をより負担の少ない形で受けられるよう計画しましょう。