未承認医薬品(薬機法)
矯正歯科治療において、日本国内で使用される装置や医療技術の中には、「未承認医薬品等」に該当するものがあります。特にインビザライン(Invisalign)は、国内で広く普及している矯正治療法でありながら、日本の薬機法(旧・薬事法)における医療機器の承認を受けていないため、「未承認医療機器」に該当します。本ページでは、インビザラインが未承認医薬品に該当する理由、薬機法上の位置づけ、適法な提供体制、リスクと注意点について詳しく解説します。
インビザラインとは
インビザラインの概要
インビザラインは、アメリカのAlign Technology社が開発した透明なマウスピース型矯正装置(アライナー)です。従来のワイヤー矯正とは異なり、取り外し可能で目立ちにくいため、審美性を重視する患者に適した治療法です。
インビザラインの特徴
- 患者ごとにカスタマイズされたアライナーを製作
- 歯の動きを3Dシミュレーション(ClinCheck)で設計
- 装置の違和感が少なく、金属アレルギーのリスクが低い
- 食事や歯磨きの際に取り外しが可能
インビザラインは未承認医療機器
薬機法における「未承認医薬品等」の定義
日本国内で医薬品・医療機器を販売・提供するためには、厚生労働省の承認(薬機法承認)を受ける必要があります。薬機法では、以下のように分類されます。
区分 | 定義 |
---|---|
承認医療機器 | 厚生労働省の審査を経て承認された機器 |
未承認医療機器 | 厚生労働省の承認を受けていない機器 |
適応外使用 | 承認を受けた医療機器であるが、承認された適応症以外に使用すること |
インビザラインは、日本国内での薬機法上の承認を受けていないため、「未承認医療機器」に該当します。
未承認の理由
- 製造元のAlign Technology社が日本国内で薬機法承認申請を行っていない
- 治療過程で製作されるマウスピースがカスタムメイドであるため、従来の医療機器審査基準に適合しない
- 矯正治療は個々の患者に応じた治療計画が必要であり、承認医療機器としての標準化が困難
インビザラインの提供体制と適法性
1. インビザラインの提供は適法か?
未承認医療機器であるインビザラインですが、日本国内の矯正歯科クリニックで提供されているのは、厚生労働省の「個人輸入」および「医師の裁量による使用」が認められているためです。
2. 医師の裁量による使用
薬機法では、未承認医療機器であっても、医師が治療上必要と判断すれば使用できると規定されています。そのため、矯正専門医が適切な診断・治療計画を立案し、適法に提供することが可能です。
3. インビザラインの個人輸入
インビザラインのマウスピースは、日本国内では製造されておらず、米国Align Technology社の工場で製作されたものを輸入する形で提供されます。このプロセスは、矯正歯科医が患者の代理として個人輸入の形をとることで、適法に治療を提供する仕組みになっています。
インビザラインを選択する際の注意点
1. 医薬品副作用被害救済制度の対象外
インビザラインは未承認医療機器であるため、日本国内の医薬品副作用被害救済制度の対象外となります。そのため、万が一、予期しない副作用や健康被害が発生した場合でも、国の救済措置を受けることはできません。
2. 治療の適応範囲
インビザラインは、すべての矯正症例に適応できるわけではありません。特に、以下のようなケースでは適応外となる可能性があります。
- 骨格性の顎変形症がある場合(外科矯正が必要な症例)
- 極端な歯の移動が必要な場合(抜歯矯正が必要なケース)
- 患者がアライナーを十分に装着できない場合(1日20時間以上の装着が必須)
3. クリニックの選択
インビザラインは、矯正治療の専門知識を持つ歯科医師が治療計画を立案しなければ、十分な効果を得ることができません。インビザラインの提供を受ける際には、症例数が豊富なクリニックや、認定医が在籍している矯正歯科を選択することが重要です。
まとめ
- インビザラインは、米国Align Technology社が開発した透明なマウスピース矯正装置である
- 日本国内では薬機法の承認を受けていない未承認医療機器に分類される
- 医師の裁量のもと適法に提供可能であり、矯正歯科医が個人輸入の形で治療を行う
- 医薬品副作用被害救済制度の対象外であるため、治療リスクを理解したうえで選択が必要
- 矯正治療の専門知識を持つ医師のもとで適切な治療計画を立てることが重要
インビザラインを検討される方は、矯正専門医によるカウンセリングを受け、適応範囲やリスクについて十分に理解したうえで治療を開始することが推奨されます。