部分矯正
部分矯正(部分的矯正、セクショナル矯正)は、歯列全体ではなく、特定の歯のみを対象に矯正を行う治療法です。主に前歯の歯並びや軽度の不正咬合を改善する目的で行われ、治療期間が短く、費用を抑えられる点が特徴です。
本ページでは、部分矯正の特徴、適応症例、治療の流れ、使用する装置、メリット・デメリット、治療期間、注意点について詳しく解説します。
部分矯正の特徴と適応症例
1. 部分矯正とは?
部分矯正は、特定の歯にのみ矯正装置を装着し、歯並びを改善する治療法です。全体矯正と比べて負担が少なく、治療期間が短いのが特徴ですが、適応できる症例には制限があるため、事前の診断が重要となります。
2. 部分矯正が適応される症例
部分矯正は、以下のような軽度の症例に適用されます。
- 前歯の軽度な叢生(歯並びのガタつき)
- 軽度のすきっ歯(空隙歯列)
- 軽度の前歯のねじれ(歯軸の傾斜異常)
- 矯正治療後の後戻りの修正
- 歯周病や噛み合わせの問題による軽度な歯列の調整
注意:
- 咬合に大きな影響を及ぼす症例(過蓋咬合、開咬、下顎前突など)は部分矯正では対応が難しいため、全体矯正が推奨される。
- 奥歯の移動や骨格的な問題を伴う矯正は、部分矯正では対応できないため、事前の診断が重要。
部分矯正のメリットとデメリット
メリット
- 治療期間が短い
- 全体矯正が1.5〜3年かかるのに対し、部分矯正は3ヶ月〜1年程度で完了することが多い。
- 費用を抑えられる
- 治療範囲が限られているため、全体矯正よりも安価で治療が可能。
- 矯正装置が目立ちにくい
- マウスピース矯正(インビザラインGOなど)や、審美ブラケットを使用することで、審美性を維持しながら治療が可能。
- 抜歯が不要なケースが多い
- 部分的な歯の移動が目的であるため、抜歯をせずに治療できるケースが多い。
- 軽度の後戻りに対応可能
- 以前矯正をしたが後戻りが発生した場合、部分矯正で修正が可能な場合がある。
デメリット
- 適応できる症例が限られる
- 咬合全体の改善が必要な症例には不向き。
- 奥歯を動かしたい場合は、全体矯正が必要。
- 治療後の噛み合わせに影響を与える可能性
- 前歯のみを動かした場合、咬合バランスが崩れる可能性がある。
- 歯の移動量に制限がある
- 部分矯正では大幅な歯の移動が難しいため、希望する仕上がりにならない可能性がある。
- 後戻りのリスクがある
- 保定装置(リテーナー)を適切に使用しないと、歯が元の位置に戻ってしまう可能性がある。
部分矯正で使用する装置
部分矯正では、症例に応じて以下の装置が使用されます。
1. マウスピース型矯正装置(インビザラインGOなど)
- 透明なアライナーを使用し、歯を段階的に移動させる。
- 目立ちにくく、取り外しが可能なため、日常生活に影響が少ない。
- 軽度の叢生やすきっ歯に適用可能。
2. 審美ブラケット矯正
- セラミックや透明のブラケットを使用し、目立ちにくい表側矯正を行う。
- 軽度の歯列不正に対応できるが、ワイヤー矯正であるため一定の違和感がある。
3. 部分的なワイヤー矯正(セクショナルワイヤー)
- 必要な部位のみにワイヤーを装着し、部分的な歯列の改善を行う。
- 主に前歯の矯正に使用される。
部分矯正の治療の流れ
1. 精密検査と診断
- 口腔内スキャナー(iTero)やセファログラム撮影を行い、部分矯正が適応可能かを診断。
- 歯の動きをシミュレーションし、治療計画を立案。
2. 矯正装置の装着
- ブラケットを装着する場合は、歯の表面に接着。
- マウスピース矯正の場合は、専用のアライナーを装着。
3. 定期的な調整
- 4〜6週間ごとに通院し、ワイヤーの調整やアライナーの交換を行う。
- 必要に応じてゴム掛けや微調整を実施。
4. 治療完了と保定
- 矯正装置を除去し、後戻りを防ぐためにリテーナーを装着。
- 保定期間は通常1年以上必要。
部分矯正の治療期間と費用
治療期間
部分矯正の治療期間は症例によって異なりますが、一般的には3ヶ月〜1年程度です。
症例 | 治療期間の目安 |
---|---|
軽度の叢生 | 3〜6ヶ月 |
軽度のすきっ歯 | 3〜6ヶ月 |
矯正後の後戻り | 6〜12ヶ月 |
治療費の目安
治療費は装置の種類や歯科医院によって異なりますが、以下が一般的な価格帯です。
矯正方法 | 費用の目安 |
---|---|
マウスピース矯正(インビザラインGO) | 30〜60万円 |
ワイヤー部分矯正 | 20〜50万円 |
セクショナルワイヤー矯正 | 10〜30万円 |
まとめ
部分矯正は、軽度の歯列不正や矯正後の後戻りを修正するために有効な治療法です。治療期間が短く、費用を抑えられる点がメリットですが、適応症例が限られるため、事前の診断が重要です。
矯正治療を検討されている方は、専門の矯正歯科医と相談し、自分の症例に適した治療法を選択することが重要です。