二期治療
二期治療とは、永久歯列が完成した後に行う本格的な矯正治療を指します。主に12歳頃以降、全ての永久歯(親知らずを除く28本)が生え揃った段階で実施され、歯の配列、咬合関係、咀嚼機能、審美性を包括的に整えることを目的としています。
一期治療で顎の成長誘導や習癖改善を行っている場合、二期治療は仕上げの矯正として比較的軽度な処置で済むこともあります。一方で、一期治療を行っていない場合には、抜歯や歯の大きな移動が必要となる症例も少なくありません。
本ページでは、二期治療の目的、適応症例、使用される装置、治療の流れ、治療期間と費用、注意点などを専門的かつ詳細に解説します。
二期治療の目的
永久歯列の完成を前提とした本格矯正
二期治療では、全ての永久歯が萌出していることが前提条件となります。これにより、歯の配列と咬合の最終的な仕上がりに向けて、精密かつ計画的な歯の移動が可能となります。
咬合の確立と機能改善
単に見た目を整えるだけでなく、咀嚼効率、発音、呼吸、顎関節のバランスなど、機能的な咬合の確立を目的とします。不正咬合を放置した場合、顎関節症や咬耗、歯周病のリスクが高まるため、全体的な咬合バランスの構築が重要となります。
審美的側面の最終仕上げ
前歯の排列、スマイルライン、正中線の一致、口唇のサポートなど、顔貌全体のバランスに配慮した審美性の高い仕上がりを目指すのも二期治療の大きな目的です。
二期治療が適応される主な症例
叢生(そうせい)・歯列不正
歯が並ぶスペースが不足し、歯が重なって生えている状態。二期治療ではスペースの確保のためにIPR(歯間削合)や抜歯を伴うこともある。
上顎前突(出っ歯)
上顎前歯が大きく前方に突出している状態。前歯の圧下や後方移動、下顎の咬合誘導を含む精密な治療が必要。
下顎前突(受け口)
下顎前歯が上顎前歯より前に位置する状態。骨格性の場合には外科矯正の適応となる可能性もある。
開咬
前歯が噛み合わず、上下の前歯に隙間がある状態。舌癖や口呼吸などが背景にあることが多く、筋機能療法との併用が推奨される。
過蓋咬合
上下の前歯の被蓋が深く、下顎前歯が上顎前歯の裏に深く入り込む状態。咬合調整と圧下処置が不可欠。
二期治療で使用される主な装置
マルチブラケット装置
歯の1本1本にブラケットを装着し、ワイヤーによって歯を3次元的に移動させる基本的な装置。表側矯正、裏側矯正、ハーフリンガル矯正などの選択肢がある。
マウスピース型矯正装置(インビザライン等)
取り外し可能で透明なアライナーを用いて歯を段階的に移動させる装置。審美性が高く、装着感に優れるが、症例選択が重要。
アンカースクリュー(TAD)
歯を動かす際の固定源(固定源強化)として顎骨に小型のスクリューを埋入し、難易度の高い歯の移動を可能にする。特に圧下、牽引、遠心移動に有効。
補助装置
ゴムメタルスプリング、パワーチェーン、クラスIIエラスティックなど、歯の移動を補助する細かな装置が症例に応じて使用される。
二期治療の流れ
1. 精密検査・診断
- セファロ・パノラマX線撮影
- 顎関節の評価(CT・咬合診査)
- デジタルスキャン(iTero)による歯列の3D解析
- 診断用模型の作製
- 治療方針の説明(必要に応じてシミュレーション提示)
2. 矯正装置の装着
- 表側・裏側・マウスピースなど、患者の希望と症例に合わせて選択
- 治療開始前に口腔衛生指導を徹底
3. 動的治療期間
- 3〜6週に1回の通院でワイヤー交換やアライナーの調整を実施
- 症例に応じてアンカースクリュー埋入やゴム掛け指導を行う
- 治療進行に応じて再評価と再計画を実施
4. 装置除去と仕上げ
- 予定された目標に到達したら装置を撤去
- 歯面清掃とホワイトニングの提案も可能
5. 保定期間(リテーナー装着)
- リテーナーの種類(クリアタイプ・固定式)を選択し、後戻りを防止
- 保定期間は1年〜2年以上が推奨される
二期治療の治療期間と費用
治療期間の目安
症例 | 目安期間 |
---|---|
軽度の叢生・空隙歯列 | 約12〜18ヶ月 |
中等度の歯列不正 | 約18〜24ヶ月 |
骨格性不正咬合 | 約24〜36ヶ月(必要に応じて外科矯正併用) |
費用の目安(自費診療)
装置 | 費用相場 |
---|---|
表側矯正 | 70〜100万円程度 |
裏側矯正 | 120〜150万円程度 |
マウスピース矯正(インビザライン) | 90〜130万円程度 |
アンカースクリュー(オプション) | 1本あたり1〜3万円程度 |
※詳しくは「料金表」ページをご参照ください。
注意点と留意事項
1. 成長終了後の矯正の限界
二期治療では骨格的な成長は既に完了しているため、顎骨自体の成長誘導は困難です。骨格性の問題が強い場合には、外科矯正(サージェリーファーストなど)を併用するケースもあります。
2. 歯の動きには個人差がある
同じ装置を使用しても、歯の移動速度や骨の反応には個人差があります。治療期間はあくまで目安と考えるべきです。
3. 適切な保定管理が重要
矯正治療後にリテーナーを怠ると歯の後戻りが発生するリスクが高まるため、保定期間中の通院・装着管理が極めて重要です。
まとめ
二期治療は、永久歯列を対象に行う最終的な咬合構築と審美改善を目的とする本格的な矯正治療です。
症例の複雑さや骨格状態、生活習慣、希望する装置によって最適な治療方針は異なりますが、専門的な診断と計画のもとで実施することで、長期的に安定した咬合と美しい歯並びを実現することが可能です。
成人矯正を含め、二期治療のタイミングは年齢に関係なく検討可能ですので、永久歯列が気になる方はぜひ一度ご相談ください。